論文の解説 研究・リサーチ

固有ボラティリティの研究について解説!リターンが高い退屈な銘柄に投資をしよう

株式投資において、ボラティリティに対する関心が高まっています。

機関投資家の間では世界金融危機後の2009年頃から低ボラティリティ投資や最小分散投資が採用され始めましたが、日本の投資家の間にも関心が広がりつつあります。

この記事では、ボラティリティの中でも銘柄の固有ボラティリティに着目し、期待リターンとの関係について研究した有名な論文についてご紹介したいと思います。

ご参考 Ang, Hodrick, Xing and Zhang (2006) "The Cross-Section of Volatility and Expected Returns"

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固有ボラティリティとは

まずはマイクロソフトの株価を例に、固有ボラティリティについて解説したいと思います。

累積リターンの推移(米ドル建て、配当なし、2010年5月- 2020年4月)

▲ グラフは、マイクロソフトとS&P500の過去10年間のリターンの推移です。

同期間の月次リターンに基づいて計算すると、マイクロソフトの標準偏差(年率)が21.6%、S&P500の標準偏差(年率)が13.8%とそれぞれ求めることができます。

これらの数値は、株価や指数値の変動の大きさを表しているものであり、一般的には、トータルボラティリティ(リスク)と呼ばれます。

ここでマイクロソフトの株価の変動は、CAPMモデルに基づいて市場要因固有要因の2つの要素に分解することができます。

ご参考 個別銘柄ではなく株式市場に投資をしよう!CAPMについて解説 Sharpe(1964)

市場要因とは、株式市場全体が変動した影響による株価の変動、固有要因とは、市場変動の影響を除いたマイクロソフト固有の要因による株価の変動です。

この銘柄固有要因による株価の変動が、固有ボラティリティと呼ばれるものです。

マイクロソフトの株価の変動要因(CAPM)

▲ 直近の過去5年間の月次リターンに基づいて計算すると、マイクロソフトの株価の変動のうち51.8%は市場要因、48.2%は固有要因として分解することができました。

変動要因の内訳の推移(CAPM)

▲ 時系列の推移を確認すると、固有要因が株価の変動に占める割合が最も高かった時期で80%程度、平均的には50~60%程度です。

続いて、Fama French 3ファクターモデルに基づいて株価の変動を分解してみます。これは株価の変動要因として、市場要因の他にサイズ効果バリュー効果を追加したものです。

マイクロソフトの株価の変動要因(FF3)

▲ こちらも直近の過去5年間の月次リターンに基づいて計算してみました。固有要因が占める割合にそれほど変化は見られませんでした。

変動要因の内訳の推移(FF3)

▲ こちらも時系列の推移を確認してみましたが、固有要因が占める割合は概ね50%程度です。バリュー効果が株価の変動にほとんど影響しないのは意外な結果でした。

先ほどの市場要因だけの場合と比較して、複数の変動要因の共変動が全体の分散を低下させる効果としてその他要因に含まれています。

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分析方法

それでは銘柄の固有ボラティリティは、リターンにどのような影響を与えるのでしょうか。

株式市場には固有ボラティリティが大きい銘柄と小さい銘柄が存在しますが、その将来リターンとの関係を検証したのがAng, Hodorick, Xing and Zhang (2006)の研究です。

▲ 分析方法としては、株式市場に存在する銘柄を固有ボラティリティの大きさで5つのグループに分け、各グループの時価総額ウェイトでリターンを計算します。

▲ 固有ボラティリティの大きさは時間とともに変化するため、毎月末、銘柄のグループを見直して翌月のリターン計算を繰り返します。

各グループの長期パフォーマンスを比較することで、固有ボラティリティの違いがリターンに対して平均的にどのような影響をもたらすのかを検証することが可能です。

論文においては、米国株式市場を対象として、Fama French 3ファクターモデルに基づく固有ボラティリティを日次の株価を用いて計算しています。

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主な結果

英語の元論文は40ページ程ありますので、ここでは主要な結果のみ確認します。詳細が気になる方は、論文を読んで頂ければと思います。

出所:Ang, Hodrick, Xing and Zhang (2006)

▲ リターンとの関係については、固有ボラティリティの小さいグループ(1)が大きいグループに対して、統計的に有意な高いリターンが観測されました。

出所:Ang, Hodrick, Xing and Zhang (2006)

▲ この結果は、サイズやバリュエーション、流動性などをコントロールしても有意であり、固有ボラティリティの影響がその他の要因で説明できないことが確認できます。

ボラティリティが低い銘柄のリターンが高くなる理由として、投資家が株価変動の大きい銘柄にホームランを期待して割高になるという説や、株価変動が大きい銘柄は業績期待が高まりやすく割高になるなどの説が存在します。

個人投資家の間でも最小分散ポートフォリオなどボラティリティに着目した投資への関心が高まっていますので、こうした傾向を理解して投資にも活かしていきたいですね。

コメント

  1. […] […]