株式 証券投資 研究・リサーチ

テンバガー発掘の定量的なアプローチの検証:アクティブファンド編

株式投資に取り組む上で, 株価が10倍になる銘柄, いわゆるテンバガーへの投資を狙うというのは多くの投資家が考えることです.

一方で, 完全ではないにしろ足元の情報は株価に織り込まれていると考えれば, 10倍のリターンを獲得するためには, 他の投資家が気づいていない相当大きな情報ギャップを事前に見抜く必要があります.

また, 株価が10倍になる過程では, それなりに長い保有期間が求められることや, その過程でリーマンショックやコロナショックのような大幅下落を経験する可能性もあるとすれば, テンバガーへの投資はそれほど容易ではないということがわかります.

とは言え, アップルやトヨタ自動車のような時価総額トップ銘柄の株価が数年で10倍なるとは考えづらいように, テンバガーとなる可能性が相対的に高い銘柄というのも存在するはずです.

そこで, ある程度再現可能なアプローチによってテンバガーを発掘する可能性を探っていきたいと思います. まずは, テンバガーへの投資を標榜するアクティブファンドの運用をヒントにします.

スポンサーリンク

フィデリティ・世界割安成長株投信

テンバガーへの投資を明確に標榜しているアクティブファンドとしては, 最近設定(2020年3月)された「フィデリティ・世界割安成長株投信」があります.

割安成長株って「割安株なの?」「成長株なの?」「株価が10倍になるということは成長株だよね?」と思ってしまいますが, 後でわかるように明らかなバリュースタイルのファンドです.

出所:フィデリティHP

米国で1989年12月から同様の運用を行う参考ファンドのパフォーマンスは, 米国株式の約21倍, ナスダックの約29倍に対して, 約47倍と優れた長期の実績を誇っています.

出所:フィデリティHP

そして, ファンドが考えるテンバガーの特徴は, 「1. 市場が気づいていない成長企業」であること, および, 「2. 割安な株価で投資」ができるということです.

一見すると独自の成長機会を見抜いた銘柄に対して割安な価格で投資をするというようなアプローチに見えますが, 実際のアプローチはおそらく逆です.

米国において同様の運用を行なっている参考ファンド名が「フィデリティ・ロウ・プライス・ストック・ファンド」であるように, 株価が低い銘柄の投資ユニバースから, ファンドマネージャーの成長見通しに基づいた銘柄選択をしていると考えられます.

ここでの株価が低い銘柄が株価が高い銘柄と比較して相対的に高いリターンをあげるという傾向については, Blume and Husic [1972] "PRICE, BETA, AND EXCHENGE LISTING"以降の研究でよく知られています.

実際に, 日本の株式市場においても同様のアプローチで運用を行なっているアクティブファンドがいくつか存在しており, 株価が低い(ボロ株)というのはテンバガーを見つけるための1つの基準になると言えそうです.

スポンサーリンク

注意点

「フィデリティ・世界割安成長株投信」について, 個人的に意識しておきたいと考えるポイントについても書いておきたいと思います.

出所:フィデリティHP

まずは, ファンドのパフォーマンスについてです. 前述したように, 運用開始来である1989年12月からのパフォーマンスについては, 約47倍と優れたパフォーマンスであることがわかります.

出所:Fidelity HP

一方で, 青線がフィデリティ・ロウ・プライス・ストック・ファンド, 黄色線がS&P500ですが, 足元の10年間では市場指数に対する超過リターンはマイナスとなっています.

既にご存知の方が多いように, リーマンショック以降の株式市場は大型・グロース相場だったため, 小型・バリュースタイルの低位株ファンドには難しい市場環境だったと考えられます.

長期チャートでは, 2000年代前半のITバブル崩壊時に大きく稼いだ超過リターンが複利効果によって広がっているため, ファンドのリターンに再現性があるのかを改めて考える必要があります.

出所:Fidelity HP

また, もう1つの観点として手数料の影響についても考える必要があります. 米国で販売されている投資信託には年率0.87%の信託報酬が掛かっています.

一方で, 日本で販売されている投資信託である「フィデリティ・割安成長株投信」は販売会社の購入時手数料が最大で3.30%(税込), 信託報酬が年率1.65%(税込)掛かります.

出所:Fidelity HP

長期のパフォーマンスを数値で確認すると, 同スタイルの指数に対する超過リターンが年率3.5%ですので, 日本の手数料が掛かる場合には1/5ほどの超過リターンが失われることになります.

それでも約30年の運用期間において年率3.5%の超過リターンをあげているのは優れた運用実績であることは間違いないですし, 長期のグロース相場の転換が意識されつつある現在において検討するには面白いファンドであると考えられます.

スポンサーリンク

まとめ

今回の投稿では, テンバガーへの投資を標榜するアクティブファンドの運用を例に, テンバガー発掘のヒントについて考察してみました.

株価が10倍になるという点ではスタート地点もそれなりに低くある必要があるということで, 株価が低いボロ株に着目するというのはテンバガー探しの1つのアプローチになりますね.

ちなみに, ファンドの想定保有銘柄は500〜800銘柄となっており, テンバガーを発掘するのはプロでも難しいことがわかります.

どちらかと言うと, 高い確率でテンバガーを当てているというよりは, 低位株のベータをファンドマネージャーがエンハンスしているという方が実態に近いのかなという印象をもちました.

次回の投稿では, 低位株に関する主要な先行研究について振り返ってみたいと思います.

コメント