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マルチファクターポートフォリオの構築方法を比較:MSCI編

ファイナンス研究の進展によって, 将来のリターンを有意に予測する様々なリスクファクター(アノマリー)の存在が明らかになっています.

時価総額が小さい銘柄の将来リターンが高い, 株価が割安な銘柄の将来リターンが高い, 収益性が, 総資産成長が, ボラティリティが...などなどといった形です.

最近では, あまりにも多くのファクターが発見され過ぎた結果, ファイナンス界隈では統計的な偽発見について議論が活発になってきているようですが, その話はひとまず置いておきましょう.

各ファクターにはそれぞれ得意とする市場局面, 苦手とする市場局面がありますので, これらのファクターを総合的に考慮すれば安定したパフォーマンスにつながるのでは!?...という発想がマルチファクターの考え方です.

個人的にマルチファクター型のポートフォリオ構築について検討する機会がありましたので, 勉強として, 代表的な指数ベンダーであるMSCI, S&P, FTSEのマルチファクター指数の構築方法についてまとめてみることにしました.

ご参考: MSCI DIVERSIFIED MULTIPLE-FACTOR INDEXES METHODOLOGY

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MSCI

まずは投資家の皆さんが最も馴染みがあるMSCIから始めましょう. MSCIの代表的なマルチファクター指数は, "Diversified Multiple-Factor Index"という名称でシリーズ化されています.

考慮しているファクターは, バリュー, サイズ, クオリティ, モーメンタムの4つです. 指数ポートフォリオの構築に際しては, Barraと呼ばれるMSCI社のリスクモデルを用いた最適化によって, ファクターに対するエクスポージャーを最大化します.

MSCIのリスクプレミアム指数では最小分散指数が有名ですが, ここではファクターとして考慮されていません.

これは最適化において, ポートフォリオのリスク水準を市場指数と同程度に抑えているためです. ポートフォリオを低リスクにしてしまうと, いくら他のファクターを考慮しても, 低リスクの影響が支配的になってしまうのだろうと推察されます.

4つのファクターエクスポージャーの平均値を各銘柄のアルファスコアと定義し, 各種の制約条件を満たしつつ, このアルファスコアを最大化となるポートフォリオを構築するように最適化を掛けます.

4つのファクターの定義については, サイズはBarraモデルのサイズファクター, モーメンタムはBarraモデルのモーメンタムファクターとシンプルです.

一方で, バリューは, Barraモデルのストックバリュー(≒PBR):フローバリュー(≒PER)=1:2の合成ファクターです.

クオリティは, Barraモデルの収益性:投資クオリティ(低投資):利益クオリティ(アクルーアルズ):利益変動性:財務レバレッジ=1:1:1:1:1の合成ファクターとなっています. クオリティは色々と突っ込んだ感がすごいですね.

※ barraモデルには, 株式のリスクを計測するためのリスクファクターが独自に定義されており, ある銘柄が各ファクターにどの程度のエクスポージャーをもっているのか全て計算されています.

そして, ポートフォリオを構築する際に満たすべき主な制約条件は以下の通りです.

個別銘柄の最大ウェイトは, 時価総額加重指数のウェイト+2%, もしくは10倍まで. 最小ウェイトは時価総額加重指数のウェイト-2%, もしくは0%です.

マルチファクター指数で考慮されていないその他のbarraリスクファクターへのエクスポージャーは±0.25σ以内.

セクターのアクティブウェイトは時価総額加重指数に対して, ±5%以内.

時価総額加重指数においてウェイトが2.5%以上ある国のアクティブウェイトは, ±5%以内.

半年に1度の指数リバランスにおける売買回転率(片道)は20%以内.

意図したファクター以外の部分でリスクを取りすぎないように色々とコントロールされています. 一度走り出したら簡単にはメンテナンスできない指数だけあって, 制約条件は保守的(厳しめ)になっています.

▲ ちなみに, MSCI World(先進国)ベースのパフォーマンスがこちら. 長期では複利の効果で勝っているように見えますが, 足元の5年間は年率で2%弱負けています.

この期間は大型グロースに集中して賭けていないと勝てない期間だったので, マルチファクターには厳しい環境でした. 今後のパフォーマンス回復に期待ですね.

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まとめ

今回の投稿では, MSCI社が提供するマルチファクター指数の構築方法について確認しました.

バリューやクオリティのように, 相反するファクターを同時に考慮しようとすると, あちらを立てればこちらが立たず状態に陥りがちなので, 最適化でエクスポージャーを確保した方が手っ取り早いのかもしれないですね.

ただ, 最適化の欠点はパフォーマンスが悪い時に説明が難しいことです. マルチファクターということで4つのファクターポートフォリオの平均辺りにパフォーマンスが落ち着いて欲しいところですが, 混ぜた結果一番悪くなるといったことが度々起こります.

参考にする際には, アルファスコアを構築する際にどのファクターを考慮するか, ポートフォリオにどのような制約を設けるかなどがポイントになりそうですね.

▼ S&Pのマルチファクター指数である「QVM Multi-Factor Index」については, こちらの投稿です.

▼ FTSEのマルチファクター指数である「Comprehensive Factor Index」については, こちらの投稿です.

コメント

  1. […] 【オタク向け】マルチファクターポートフォリオの構築方法を比較:MSCI編… […]

  2. […] 【オタク向け】マルチファクターポートフォリオの構築方法を比較:MSCI編… マルチファクターポートフォリオの構築方法を比較:S&P編前回の投稿においては, マルチファクターポートフォリオの比較として, 「Diversified Multiple-Factor Index」のメソドロジーを確認しました.今回の投稿では, S&Pのスタンダードな…index-atama.com2021.05.29 […]